大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(く)448号 決定

被告人 佐々木昇 ほか一三名

〔抄 録〕

たとえ裁判官が、令状発付に当って、しかも被告人以外の者の令状発付に関して、疏明資料を閲覧したとしても、刑事訴訟法二〇条七号にいう前審関与に当らないことは、多言を要しない。

また、差押許可状、ことに被告人以外の者の被疑事実に関して、差押許可状を発付し、その際に疏明資料を閲読したとしても、そのことから直ちに、当該裁判官が、不公平な裁判をする虞れがあるといえないことは、最高裁判所昭和二五年四月一二日大法廷判決(刑集四巻四号、五三五頁)、同裁判所昭和二八年一〇月六日第三小法廷判決(刑集七巻一〇号一、八八八頁)の趣旨に照らし、明らかである。

同裁判官発付の差押許可状により、司法警察員のした差押処分が、後日千葉地方裁判所において取り消され、右取消決定が最高裁判所で支持されたという、所論指摘の事情も、右の結論を左右するものではない。差押許可状の発付を求められた裁判官は、令状を請求する者の意見を聞き、その提出する資料を閲読することはできるけれども、捜査の秘密の保持と迅速さの要請から、差押を受ける物の所有者等の意見を聞くことができず、その者の提出する資料を閲読する機会も与えられていないのであって、令状請求書の記載が要件を具備しているか否か、差押の対象物と当該犯行との関連性の有無などについては、これを審査しなければならないとしても、その証拠物としての重要性の程度、公判段階での取調を予定して、差押により現状を保存しておくべき必要性の有無などについては、十分に調査し判断することまで要請されているものとは考えられない。

井上裁判官の発した差押許可状により司法警察員の行なった差押処分が、後日、準抗告審および特別抗告審において、多数の資料に基づいて、必要性がないと判断されたとしても、そのことから直ちに、同裁判官が、差押の必要のないことを知りながら、敢て差押許可状を発付したもの、ひいて、被告人ら、新東京国際空港の建設に反対している者に対して、いわれない予断と偏見を抱いており、被告人らに対して不公平な裁判をする虞れがあるものということはできない。<中略>

裁判官が共犯者の被疑事実に関して差押許可状を発付し、かつ、その機会に、被疑事実に関する司法警察員提出の資料を閲読したからといって、それが直ちに当該裁判官に不公平な裁判をする虞れがある根拠とならないことは、前記のとおりであるから、本件忌避申立は、しょせん認容される余地の全くないものである。

それにもかかわらず、敢てなされた本件忌避の申立は、訴訟の遅延と裁判の権威の失墜をもたらすことを狙いとするものとしか考えられないのであって、本件申立は、訴訟遅延のみを目的とするものとして、刑事訴訟法二四条にのっとり、簡易却下すべきものである。

従って、本件忌避申立を簡易却下した原裁判所の訴訟手続は相当であって、なんら審理不尽、事実認定の誤りの違法は存しない。この点に関する論旨も理由がない。

(綿引 藤野 三好)

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